まず「かかし」について。

彼はかかし
歌ったり曲を作ったりしている。
それ以上は話せない
しかし次第と彼について分かってくるはずだ
	
かかしと出逢ったのは
東京都内のある公園。
朝まだ6時前 白んだ空の下

私はブランコに揺られていた。
(実際は、揺れてなかったかも知れない)
セミロングの髪は軽く灰色をおびていて、
黒いズボンに厚手のパーカーを着て
ただ ぼーとしていた。

手にはコンビニ袋、おにぎりでも
食べていたんだろうか。
とにかく寒い。
何をしているのかとかは
聞かないで欲しい。
この時私はプーだったから


しばらくそうしていると
公園の入り口の方から、声が聞こえてきた。
楽しそうな声。
じゃーな、と軽い挨拶で
連れ合いと別れた一人の男が
 公園の前にさしかかった



そっちを見ていたら
彼も人の気配に気付いて、こっちを見た。

正直、男性が苦手な私は硬直した。
「こんな時間に何してるんだ」と
きっと怪しまれるんだろうなんて
考えたりして




にこっ

いや、にやって感じかも知れない
確かに笑った。 こっちを見て。
私は顔が紅潮するのを抑えようと
必死だった



それがかかし、
黒い髪は背中まである。
それをてっぺんで
結んでいる。
第一印象は「痩せてる」
のとやたら肌が荒れてると思った

2秒程、目が合ってから
私は何もなかったかのように
繕おうと思ったので
平然として、前方を向き直して祈った




早く通り過ぎて。
この焦燥に気付かないで。




だけど期待は破られた
(別の期待は果されたのだけど)

かかしは公園の中に入ってきた。

とうとうそっちを見ずには
いられなくなったので
顔色を悟られないよう
努力した

言葉はそんなに交わさなかった。
あまり覚えてない
ただかかしは優しそうだった。
寒いから家においで、と言った。
少し恐かった?かも知れない
でも期待してたのも確かで、
彼の部屋を訪れた。


そこは打ちっぱなしの
コンクリ壁が印象的な部屋だった。
飾り棚などは赤で、
レコードを回す台とか、機材とか
沢山。
広くはないけど落ち着いた。
何か変な、この部屋に似つかわしくない
物が置かれていたので笑ってしまった

かかしはカフェオレを
出してくれた。
正確に言うと
白いカップを渡されたから
私がお湯を入れたんだけど。

それから他愛もない話をした
時折かかしは上を向いて
考え事をしているようだった。
ななめ下を向くと目の下に
くっきりとくぼみが見える
そして時々
子供みたいに笑った。
私は今まで見た中でも
極上の笑顔をする人だと思った

彼はそわそわと落ち着かない。
しばらくするとレコードデッキに
向かっていって曲をかけた。
音楽がないといられない性質のようだ

さっきまでは、
飲みに出かけていたらしく
微かに、いや結構アルコール臭がした。
結んだ髪の毛が
ちらほらと首まで垂れていて
彼の顔に美しい陰影を
作り出していた

カップの底が見えかけた頃、
かかしはテープを手にして
デスクへ向かった。
そして一言、
「温まったら帰っていいよ」

だから
8時頃 部屋を後にした









つづく
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