出来事を
頭で整理してみた


でも
片付かなかった。
俄かには信じられない。

あのエンジが私に?


いや、やっぱり
顔にゴミが付いてたのかも
知れない。と思うことにした。
今でもそう思っている
 
人間、自分に都合の良いように
解釈するものだから

起きたのは遅かったのに
とても長い一日だった

腕時計を見ると
針は既に
日付変更線を越えていた 


明日、もとい
今日は仕事がある
早く寝ないと。
そう思いながら
真横にあるドアを開けた


誰も居ない部屋は真っ暗だ
電気をつけずにそのまま
ベッドにダイブしようかと考えたけど、
緊張のしすぎで
かなり喉が渇いていた。
キッチンに指を滑らせながら
窓から差し込む明かりだけを
頼りに冷蔵庫まで辿り着く。

ミネラルウォータとカクテル瓶がある
私は当然、前者を選んだ
体は冷え切っているのに
冷たい水が喉に心地良かった。
体に流れ込む清涼感を感じると
ふと違和感が沸いてくる

水・・水・・・火の始末

煙草だ!
エンジが吸った煙草を
そのままにしてある
さすがに火は消えているだろうけど
このマンションの管理人は半端じゃない
週2回のゴミ出しに始まって
廊下から階段に至るまで
目を皿のようにしてチェックしている
吸殻が2、3本落ちてるなんて
何を言われるか分からない

朝しようと思ったら
きっと忘れてしまうので
一度安息しきった体を
玄関へとUターンさせて
半ばヤケ気味に
思いっきりドアを開いた




目の前には
薄く青みがかった
雲ひとつない夜空が
ポーチから延々と広がっていた。

暗闇に目が慣れたせいか
今しがたまでは
気付かなかった美しさで驚いた



玄関から身を乗り出すと同時に
光の塊が弧を描いて通過した
しばらくその正体を考える


UFO!?
違う、流れ星だった
 生まれて初めて見た。
体を乗り出して行方を追ったが
思っていた以上に流れは速くて
ものの1秒でどこへ行ったのか
確かめることもできず
消えてしまった

流れ星って本当に
線を描きながら落ちるんだと思った
それは花火の残像にも似ていた

もしかして
昨日から今日にかけて
一生分のラッキーを使い果たして
いるんじゃないだろうか、
なんてふと考えた。

何だかちょっと
思い出していた。
裏口で 星の数をかぞえていた日のことを。

余韻に浸りながら
ミュールをぶらつかせて
フェンスにもたれかかると
自然と階下を覗き込む形になった
闇がぽっかり口を開けていて
いつもと違って少し怯えた。
深夜にノーアルコールの状態は
珍しいからだ

すると右方向から音がしてきた。

フェンスが呼応して
規則的な靴音、というより
振動に近いものを送ってくる。
これは階段からに違いない

深夜0時半頃だろうか
いつもなら大抵酔って帰るので
この時間帯は平気なのだけど
さすがにシラフだと
恐い気持ちがした

気が付くと
階段前の廊下は
真っ暗だった
点滅していた
電灯が、ついに切れたらしい

階段を登り終えたらしき
人影が廊下に一歩、足を着いた

よほど大きな靴なのか、
派手に床を踏む音がした
一瞬にして背筋が凍りつく

エンジ?
 
それは違うとすぐに分かった
ぼんやりと見える影は
ものすごく大きかったから

熊?

動揺して有り得ないことを
想像してしまった
でもそれ位、黒くて大きな影だ


とにかく
私の焦燥に気付かないで
早く通り過ぎて。
そう願った


すると
今度は微かに、耳になじむ
音が聞こえてきた

それは軽快な口笛だった

私に気付いていて
わざと口ずさんでいるのだろうか
だとしたら変質者?

こちらへ進んできたら
確実にそうだ。
この部屋の奥には
一つ部屋があるけれど
今は誰も住んでいない
しかも
階段からこちらには
この2部屋しかないのだから

そう胸で念じた途端
口笛が近くなった

急に
私の思考は
その口笛の主を
知っていると思った


知っている
けれどそんなはずない

頭の中で
仕事していても
酔っていても
ベッドの中でも
バスルームにいても
どんな時でも
私を惑わしていた人なわけがない

そうであって欲しくない。

3mほど手前で、
明かりがようやく
彼を照らしてた

















つづく
もどる






















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