ふらふらなりながらも
何とか手すりに掴まって
階段を降りた
途中、会社員らしき男性が
大丈夫?と言って
肩を持ってきた
それがたまらなく嫌で
何とかうまいこと言って逃れた


こんな時は
変な期待をするものだ
いつものように
かかしが来てくれるとか

来ない 来るはずない
はっきり否定された
特別な関係じゃないんだ


でも
私は何も言わずに
店を出てきたことを後悔していた
折角呼んでくれたのに
他の女性と話していたくらいで
すねることなかったんじゃないか

私には十分すぎる贅沢だったのに
かかしと居る空間こそが
望みの全て


そう考えていると
いつの間にか
駅の真ん前まで来ていた
気分は少し落ち着いてきたみたいで
軽く走った時程度の呼吸をしていた

構内へ入ると
大量の靴音と、駅独特の
機械音が耳に飛び込んできた


会社方面行きの電車を
電光掲示板で確かめる
6時21発・・?
隣りの大きい時計に目を移すと
!
あと2分で出てしまう

急いで陸橋を渡れば間に合う
今すぐ走り出せば


でも

でもどうしよう
このまま行ってしまいたくない
最後に
彼がこの地にいる間に
お別れをしておきたい
今までの色んな事も
謝りたい
それでも、
友達で居てくれるなら
辛いけど
そうなりたいと思った

思ったら急に
時計台を思い出した
あの公園の小さな時計台。
あそこから始まって
でもいつでも
私一人
空回りで、
自信がなくて
正直になれなかった。


彼が目覚めた時に
髪の毛をくくってあげたり
新しいレコードを
入手すると延々と聞かされたり
よく分からない外人アーティスト
の名前を覚えさせられたり
休日に米戦争映画ばかり7時間
ぶっつづけで見たり
靴下を何日もはきかえてなかったり
部屋がちらかりまくってたり
ご飯の途中に寝ちゃったり
約束破ったり
した事も全部嫌じゃなかった




朝の6時半
騒がしくなりはじめた
駅の構内で
誰の目も気にする余裕なく
その場にしゃがみこんで
泣いた















「泣くなよ」


「俺ががつんと殴って
      やったから、言葉でな(笑)」

意味が分からなかった。
でも誰の声かはすぐ分かった。
何度もこの声に
助けられている。
かかしに違いなかった

私が泣き過ぎで
すぐに顔をあげなかったので
彼はゴホン、と
二回程咳払いをした


かかし
私は変な声で呼んだ
ぐちゃぐちゃになった顔を
隠しながら。



何だよ、と
かかしは笑いながら
思いっきり叫んだ


駅はしばらく 見物客みたいな通行人で 停滞状態になった

駅の前で
朝日に照らされたかかしは
所々に疲れを匂わせる
陰を蓄えて、
でもすばらしく
輝いて見えた
ふんぞりかえってたからかも
知れないけど。




それから
人目を避けながら
近くにある市内で
一番有名な公園に移動した
もっともかかしは
気にしていないようだった
すれ違いざまに露骨に
噂話していく人もいた

太陽は軽く見上げる高さになっていた




picture・・






公園は日曜の早朝だけに
猫ぐらいしかいなかった

思考回路はショート寸前という
歌詞が出てきそうな位
いまだ私は混乱していた

どうしてかかしは
駅に来たんだろう
寒さで赤くパンパンになった
顔を手で覆いながら
ゆっくりと質問していった

かかしは女性達との
話に熱中していて
私が帰った事に気付かなかったらしい

うん、と
静かにおとずれる胸の痛みを
感じながら返事する

私の席が殻なのを
見て戻ると
私に、
かかしに言わなくていいのと
言ってくれた人が
帰った事を伝えてくれた

それで追いかけてきてくれた・・
私は嬉しさと、まだ出口の見えない
会話に一喜一憂した


そこまで話すと
かかしは手を
にぎろうとしてきた

思わず咳をするふりして
手を明け渡さないようにした
まだ酒によるテンションなのか
寒いーと言いながら
今度は抱きつこうとしてきた

これでは
いつもと同じだ
私は堅く
気持ちを決めていたから
ここに来るまで
何度も頭で復唱した文章を
口にした


かかし
私は疲れてしまった
他の女性と
会うことすら苦痛だった
でもかかしと居て
ずっと楽しかった
かかしの人間性も
大好きだった

それから・・
それから
かかしの作る曲も
歌い方も
最高に好きだ
きっと
かかしは
これからも今まで以上に
素敵な女性に巡り合えるから
私も頑張るから


友達として
会って欲しい




頭でまとまっていたはずの
文章はそこかしこに分散して
言いたい事と食い違った

もうこれでいい
最後の方には苦しくて
目をつぶってしまった
かかしの飽きれた顔が
見えそうだったし
画像がなければ
多少返事がきた時の
衝撃は薄いと思った

返事を待ってる時間は
私にとって
夕焼けが落ちるのを
ずっと見ているくらい長かった




2秒経っても目をひらけず
3秒待った所でまぶたが震えた

でも
返事がないから
もしかしてかかしが
そこに居ないんじゃないかと
急に不安になって急いで目を開けた

かかしは 居た
しかし視界がぶれるくらい近くに
つまり私の顔を覗き込むように
首を傾けてじーっと見ていた

驚いて ゃっと変な声を出した



  理解不能



そう言うとかかしは
酔ってんのか俺、と
困ったような笑い方をして
誰もいないブランコの方を向いた

そして私の方に
向き直した時
彼はすっかり冷めた目つきで
私のおでこを軽くはたいた

よく分かった
お前が一生懸命考えて
出した答えだな
俺は拒まない
今までだってそうだったし

そう言ったような気がする

はっきり分からない
今まで見たことのない
世界で一番冷たい目に刺されて
頭は麻痺していたから




私をベンチに残して
かかしは立ち上がった


公園を出ていく時、
彼はそこにあった
鉄製の丸いゴミ箱を
思いっきり蹴ったので
街をクリーンに保ちましょうと 書かれたプレートが落ちて その場に悲しく残された   










つづく
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